英語で履歴書

英文の履歴書も、たいてい出願必要書類に含まれている。もちろんそんなものは書いたことがない。だいたい、日本語の履歴書だって、最後に書いたのは新卒の就職活動まで遡るかもしれない。そういえば、当時は、履歴書の写真を撮るのは伊勢丹写真館、みたいな暗黙のルールがあった。あるいは一種のジンクスだったのだろうか。でも伊勢丹の写真は高いのだ。ひと月ほど前に偶然そのときの写真を見つけ、あまりに今の自分と違う人間が写っていたので大笑いしてしまった。

さて、本題は伊勢丹写真館ではなく、英文履歴書だ。とりあえず本屋で「英文履歴書の書き方」みたいな本を見つけ、家に帰って読んで唖然した。

- 主語は書くな。

確か中学生のころに、日本語ではよく単語を省略するけど、英語は常に五文型に従う、という鉄則を叩き込まれた。SVとかSVOとかの話だ。英作文で主語の「I」でも忘れようなものなら、間違いなく不正解のバツをつけられた。主語と動詞がきちんと一致しているか、なんてのは英語のテストでは基本中の基本だ。

ところが、である。履歴書には主語は書くな、と言う。かれこれ二十年近くも守ってきた英語の基本を真っ向から否定されたのだ。これは、天動説を否定されたくらいショックだ。

履歴書では主語を書かず、いきなり動詞から始める。主語が「I」なのがあまりにも明白だからだ。もし動詞がBe動詞だった場合には、それも潔く省いてしまう。中学のときに習った五文型とは、まあ原則のようなものであって、実は英語でも省略することがある。履歴書に限らず、例えば電子メールやインターネット上での会話でもそうだ。今でこそ、慣れ親しんだこの新ルールだが、当時の僕には相当な衝撃だった。

当惑する僕を無視して、本は続ける。

- 主語は書くな、アクション動詞を使え。

アクション動詞って何だ。だいたい、「アクション」と動詞の「動」って同じ意味じゃないのか。

- 自分のアピールポイントを簡潔にまとめてサマリーを作ること。
- レターサイズの用紙一枚以内に収めること。ただしフォントサイズは10ポイント以上。

健康状態:良好、資格・特技:普通自動車免許、に慣れていた僕にとって、英文履歴書は全く異なる怪物だった。

さて、書き上げた履歴書は、少なくともMBA受験には有効だったようだ。が、やはりアメリカの労働市場で通用するにはまだまだだったようで、就職課が納得するレベルの履歴書を仕上げるのに二年間の学生生活のほとんどを費やすことになる。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *