喉がカラカラになる面接

MBAフェアのタイミングで、東海岸の学校の面接を受けた。○月○日に東京に来るから会えないか、と言う。会場になっている新宿の高層ホテルのロビーで待ち合わせ。たくさんの学校が同じタイミングで面接をやっているので、ロビーには、やや緊張した面持ちの日本人ビジネスマンが集まっている。就職活動中の大学生よりは上手にスーツを着こなしているが、発する熱気と空回りするぎこちなさは、新卒のそれとあまり大差ない。

しばらくすると、ペーパーボードを手にしたアメリカ人女性がロビーに姿を現す。ミスター○○?誰にともなく、集まった集団に声をかける。イエス。右後ろからちょっと甲高い声がして、細身のスーツを着た小柄な若者が前に出る。シンデレラ城の選ばれし勇者(あるいは風俗店の待合室)のようなこの光景が何度か繰り返され、やがて僕の名前が呼ばれた。

握手もそこそこ、奥の喫茶店まで案内される。テーブルの上には散らばった書類。初めまして、私は○○。今日はいかが?朝早くてごめんなさい。でも結構タイトなスケジュールなのよ。まずは軽い世間話でウォームアップする。あなたの書類読ませてもらったんだけど、面白い経歴をお持ちね。まずはとりあえず簡単に自己紹介をしていただこうかしら。

面接の練習はそこそこやった。想定問答を準備して、ぶつぶつと答えを言う。何でうちの学校を志望したのか。前職では何をしていたか。スポーツは何が得意か。五年後の自分をイメージできるか。あーでもない、こーでもない、と同じ質問に答え続ける。

自己紹介はもちろん練習済みだ。数字を使って実績をアピールしつつ、時系列で過去の仕事を挙げて行く。前職でいかに困難なプロジェクトを成功に導いたかを語るころには、話もノってきて、身振りも激しくなる。そこに登場するウエイトレス。「いらっしゃいませ。ご注文は何になさいますか?」

確かに面接の練習はしていたが、この質問は想定してなかった。しかも、英語ではなく日本語で答えなければならない。一瞬頭が真っ白になる。何を頼んだら良いだろうか。アメリカ人は面接のときに何を飲むのだろうか。会計は相手持ちになるのだろうか。あまり高いものはまずいだろうか。水でもいいけど、それじゃお店が許さないだろうか。だいたいメニューはどこにあるのだろうか。

絞り出すように、「じゃあ、コーヒーを」と注文し、何とか面接モードに戻ろうとする。もちろん、どこまで話したかなんて覚えていない。えーと、うーんと、あのー。僕は何のプロジェクトでどんな成果を出したんだっけ。急にしどろもどろになり、話を上手くまとめられないまま、会話が途切れてしまった。

結論から言えば、この面接の結果は合格で、僕はコーヒーの代金を払わなかった。だからまあ結果オーライではあるのだが、いまだに悔やまれるのは、あのときオレンジジュースを頼まなかったこと。ホテルの喫茶店のオレンジジュースは絞りたての濃厚なやつだったはずで、緊張でカラカラになった喉の渇きを潤してくれたに違いないのだ。

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