ずうずうしくも奨学金

最後の最後の段階で、僕は二つの学校のあいだで揺れ動いていた。東海岸にある学校からは、「一年目:授業料免除+生活費補助、二年目:学内アルバイト先保障+州内居住者向け学費割引適用」という魅力的な条件をもらっていた。もうひとつの西海岸の学校は、「一年目:授業料割引、二年目:学内アルバイト先保障」というやや劣った条件で、トータルで数百万円の違いがあった。

個人的には西海岸に行きたかったし、そっちの学校は学校訪問もして気に入っていた。東海岸なんて遠くて行ったこともなかったし、寒くて人が冷たそうなイメージがあった。でも、数百万円の違いは大きい。数日間苦悩したあと、その苦悩をそのまま西海岸のアドミッションにメールで伝えてみた。

拝啓、アドミッション様。御校は、気候も良いし、人も親切だったし、行きたいのは山々なんですが、実は別の東海岸の学校から断りがたい奨学金を提示されてしまった。貧乏な留学生にとって、留学費用は切実な問題。ついては、泣く泣く御校への入学を諦めようかと考えている所存。もちろん、費用の問題が解決できれば、喜んで御校の門をくぐることやぶさかではないのだが。云々。

もちろんありましたよ、下心。それほど期待していたわけではないけれど、もしかしたら奨学金でも出るかな、と。すると、一週間もしないうちに返事が届いた。「一年目の学費をさらに半額にし、二年目には学内の割安アパートを保障するが、いかがか?」あわてて計算してみると、額にして百万円強のオファーだった。

入学後に聞いた話だが、価格論の教授によれば、ディーラーの車販売と同じで、大学院の学費の価格というのは、あってないようなものなのだそうだ。とりあえず店頭には希望小売価格を提示しておく。もし顧客がお金持ちなら、その値段で買ってくれるかもしれない。普通の客なら値引きを要求する。ディーラーはちょっとだけ値段を下げてみる。ある客はその値段で買うかもしれない。僕みたいな貧乏学生だったら、買わずにもっと粘るだろう。要は、せっかく高く買ってくれる客がいるのなら、という理由で、最初は高い値札がついているが、あとは客の懐具合に応じて交渉次第、ということだ。大学院の学費も、同じ理論で動いているのだという。

求めよ、さらば与えられん。失うものがあるわけでもないし、合格通知が届いたら、まずは学費交渉のメールを送ってみたらいかがだろうか。

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